ポール・クレストンの音楽

プレリュードとダンス
クレストンについて
クレストンはイタリア人の血を持ち、5歳の時、父親に連れていっても らったシシリアの印象を大事にして育ったという。音楽は小さな時に中古のピアノを無理して買ってもらったのがそもそもの始まりだった。しかし本格的に作曲家を志したのは26歳の時。すでに結婚して5年経っていた。

小さい頃からいろんな本を読み漁るのが好きだったというクレストンだが、作曲に関しても徹底的に本から学んだ。当時入手できる作曲法、和声や対位法、音楽理論など、ニューヨークの図書館にあるものを片っ端から学習したらしい。その他音楽の講演会やコンサートにも積極的に出かけ、マンハッ タンの地の利を活かした独学をした。

そのうち友人が、クレストンに作品を出版してみないかと持ちかけた。最初は乗り気がなかったクレストンだが、一気奮闘して<ピアノのための7つのテーゼ>を新音楽出版社に持ち込む。当時この出版社の編集を担当していたのが、あのヘンリー・カウエルだったのだが、カウエルはクレストンの才 能を即座に見抜き、作品出版を快く引き受けたという。カウエルは、その後もクレストンの作曲を常に励ましていたらしい。(この項未完。1998.9.3.?執筆、2005.05.07.改訂)


交響曲第2番 作品35
ネーメ・ヤルヴィ指揮デトロイト交響楽団
英Chandos CHAN 9390

1944年の2楽章形式の作品。クレストンは同曲を「全ての音楽を代表する2つの基礎--歌と踊り--の賛歌」だとしている。確かに第1楽章にみられる美しく叙情的な旋律は魅力的であり、感情の自然な起伏を大切に、素朴に歌い上げている。ピアノも、ハープでは表現できない素朴さにつながっているのかもしれない。第2楽章は激しいパッセージがレチタティーヴォ風に流れ出す部分と、白熱したダンスの部分で成り立っている。自然に体が乗り出してくるような音楽だ。

クレストンは1970年代の雑誌記事で、近年の作曲家はテクニックの習得に囚われすぎて魂の抜けた作品ばかり作っていると言っているが、アカデミズムと自然に距離を保つことが出来たクレストンならではのこのような発想が、力強い第2交響曲の原動力になっていると思う。

ヤルヴィの演奏は、下記ミッチェル盤ほどの重厚さやタメはない。しかしぐいぐいと曲を押し進め、それでいてすっきりとまとめている好演。録音的にも、ミッチェル盤より聴きやすく、それは特に第2楽章に強く影響すると思う。入手の容易さも加味して、強く推薦したい。同時収録はアイヴスの第2交響曲。(1998.9.3.執筆、2002.1.2.、2005.05.07.改訂)

テオドール・クチャール指揮ウクライナ国立交響楽団
香港Naxos 8.559034
演奏としては「無難」という印象が強い。しかし一緒に収められた第1交響曲が貴重だし、値段の安いのが魅力だ。後半の3つの交響曲が録音される計画もあると、ある雑誌に書かれていたが、5番はシュワーツ/シアトル響のものがリリースされてしまったようだ。なお万が一この演奏でクレストンの交響曲はつまらないと判断された方にはヤルヴィ盤の第2交響曲をお勧めしたい。(2000.12.9.執筆、2002.1.2.、2005.05.07.改訂)
ピエール・モントゥー指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

An American Celebration 第1巻、 CD5を参照(2000.12.9.)
ハワード・ミッチェル指揮ナショナル交響楽団
米Westminster W-9708(LP)、XWN 18456(LP)
クレストン 交響曲2・3番 ミッチェル おそらくこの作品の初録音。モノラルで、あまりクリアーではないが、力強さや響きの厚さなど聴きごたえ充分の演奏だ。第1楽章の情感豊かな歌、第2楽章どっしりとした迫力はいずれも素晴しい。ぜひCD化して欲しい音源だが、LPはボストンの中古屋で3度見かけたことがある。なお、後にオレンジ色のジャケットで再発売もされている。カップリングは第3交響曲。(2001.2.19.執筆、05.05.07.改訂)


交響曲第3番《3つの神秘》
ジェラード・シュワーツ指揮シアトル交響楽団

米Delos DE 3114

《3つの神秘》と題された交響曲第3番は、イエス・キリストの生涯から3つをハイライトしたもので、各楽章には《キリスト生誕》、《キリストの磔りつけ》、《復活》というタイトルが付いている。クレストンによると、この作品は聖書の物語をなぞったり描写したというよりは、それぞれの場面からもたらされる感情的なものを表現したとのこと。例えばキリストの誕生ならば、神秘的で敬虔な前半と、救世主誕生の喜び(民謡風で面白い)を音にしたという感じだろうか。第3楽章では復活祭のミサで歌われる有名なセクエンツァが変奏されている。「クレストンもアメリカ人なんだろうな」と思わせるセンスだ。

シュワーツは学生時代、クレストンに作曲を習ったことがあり、卒業後も、積極的にクレストン作品を演奏し、新作委嘱も行っている。

第3交響曲はミッチェル盤に比較すると、緩やかだ。オーケストラも軽めで、やや緊張感が不足しているようだ。しかしカップリングを含め、上で紹介したクチャール盤とともに、資料としての価値は高いと思う。(05.05.07.、05.05.15. 追記)
ハワード・ミッチェル指揮ナショナル交響楽団
米Westminster W-9708(LP)、XWN 18456(LP)
クレストン 交響曲2・3番 ミッチェル 第2交響曲同様モノラル録音だが、重厚で鋭いリズム感のある充実した演奏。中古屋で見つけられたら、ぜひトライしてもらいたい。(05.05.07.)


舞踊序曲
アルフレッド・アントニーニ指揮オスロー・フィルハーモニー管弦楽団
CRI-111(LP)
クレストン Dance Overture 力強いオープニングにより鮮やかに始まるコンサート・オープナー向きのオーケストラ作品。急緩急の3つの場面からなる(ただしABAではないようだ)。エネルギッシュなテンポとリズムと、クレストン独特の和音が美しい。

筆者所有のモノラル録音のLPはボストン大学の音楽図書館から除籍されたもので、ジャケット左側に分類番号とバーコードが消した跡があることをお断りしておく。(05.5.15.)


マリンバ小協奏曲 
ペーター・サドロ(マリンバ)、ウォルフガング・レーグナー指揮バンベルク交響楽団
Koch International 3-6415-2.

マリンバ演奏家の間では良く知られた名曲だが、なぜか全曲オケ伴奏の録音というのがあまりない。第1楽章のみは、フィラデルフィア管弦楽団の打楽器奏者がオーマンディと録音していたし、全曲は、ピアノ伴奏版がFontecに録音されていた(「種谷睦子 マリンバ・エクスプレス」フォンテック FOCD-3257。なおこのCDの同時収録局はJ. S. バッハ/シャコンヌ、一柳慧/パガニーニ・パーソナル、高橋悠治/子守歌、三善晃/組曲「会話」、黛 敏郎/木琴小協奏曲となっている)。

カップリングはミヨーのマリンバ、ビブラフォンとオーケストラのための協奏曲と、Berthold Hummelの打楽器協奏曲である。(2001?執筆、2004.8.13.追記)

ウォルフガング・パハラ(マリンバ)、エリック・クロス指揮ニュルンベルグ交響楽団
独Aulos AUL 53576(LP)
クレストン マリンバConcertino 2
クレストンの良い演奏はモノラル期に多いのだろうか。この演奏ではサ ポート役のオーケストラも作品を盛り立てる。冒頭の迫力からして違う。カップリングはミヨーのマリンバ、ビブラフォンとオーケストラのための協奏曲、そしてパハラによるマリンバ・エチュードである。(2005.5.9.)

サキソフォン・ソナタ
ヴィンセント・J・アバート(サキソフォン)、ポール・クレストン(ピアノ)
米Columbia ML 4989 (LP)
クレストン/パーシケッティ自演
クラシックのレパートリーを学ぶサキソフォン奏者には有名な作品。マルセル・ミュールをはじめとして録音も非常に多いが、ここではポール・クレストンがピアノ伴奏をしている録音をご紹介。

アバートの音色はフランス系の澄んだ音ではなくて、ちょっと濁りを持っている。一方エキサイティングするようなヴォルトゥーゾに圧倒されたということもなかった一方 (この作品が難しいだろうことは心得ているつもりだけれど) 、第2楽章の盛り上がりは聴かせる。いずれにせよ、きっちりとあるべき音楽がそこにあるという印象だ。

一方私は「クレストンってピアノもうまかったんだな〜」というところに注目して聴いた。第3楽章にはアクセントを使ってリズムを面白く聴かせる箇所があり、作品のフィーリングは充分伝わってくる(多少端折ったようなところはあるけれど)。

同時収録曲はパーシケッティの4手のためのピアノ協奏曲で、無伴奏とある。よく分からないのだが、オーケストラは入っておらず、演奏しているのはパーシケッティ夫妻である。(2005.12.27.)


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