流星少女ナッキー
                  秋月げん

第2話 宇宙用心棒ニャンサッシャー


「警告、警告、貴船はわがピクチョン一家の縄張りを侵犯している。ただちに引き返されたし!」
 宇宙難民少女・ナッキーとアンドロイド・ミャウダーの乗るスペースダンポニウム製星間移動住居のハイパーウェーブ受信機に、どすの利いた声でこんな通信が入ってきたのは、キンダイ星宙域のロシュ限界点に差し掛かったときだ。
「ナッキー、どうやら今回は相手が悪いようです。ここでの食糧確保はあきらめて、よそへ行きましょう。」
 と、ミャウダー。
 製造元も素性も不明なこのアンドロイドは、ナッキーが故郷である惑星トルクムを焼け出されて間もない頃、行きずりの宇宙屋台のジャンク屋に恵んでもらったものである。
 このところ数年間、ナッキーと二人して宇宙馬賊キャプテン・ターランバの一味へ身を寄せていたが、ナッキーの故郷トルクムを破壊したジェイミン星共和国のテツキョジン「ウツノシシ」を倒すため、再び放浪の旅をはじめたのが1宇宙週間前。
 キャプテン・ターランバの内縁の妻ユンジャの好意により、移動住居の外壁に埋め込んでもらった多結晶光電対のおかげで住居及びアンドロイドであるミャウダーの動力源は心配要らなかったのだが、人間であるナッキーの食べるものまではさすがに太陽風から変換することもできず、出発の時大量に積んで出たベータ白菜の北極星漬けも底をついてきたので、そろそろどこか襲って食糧確保しようかとカモを探してさまよっていた時の出来事だった。
「宇宙広域暴力団ピクチョン一家と云えば、例の宇宙暴対法が施行された時にも唯一、組の看板を下ろさず、逆にそれを違憲立法だと主張してお上と真っ向から闘ったと言われます。その武装力は、銀河の警察を自称するウニテッド惑星帝国でさえおいそれと手を出せないレベルだとか。」
「そう、ウニテッドでさえおいそれと手が出せないの。じゃあここで盃受けておくのも悪くないわね。」
「・・・・・。」
「何よ。」
「ナッキー、それ本気ですか?」
「んな訳ゃないでしょ!あたしがゴクツマやるように見える?」
「それにしてはナッキー、さっきから針路変わってないんですけど。」
 ミャウダーの言う通り、ナッキーの移動住居はさっきから針路を変えず、キンダイ星の衛星軌道に建造されたピクチョン一家のサテライト事務所・通称「白銀の蔵」と呼ばれる御殿のような建造物へ、一直線に近づいていた。
「それが、さっきから方向舵利かなくなっちゃって。」
「で〜〜!なんですとー!!」
「ヤバいよ〜ちょっとミャウダー。何とかしてー!」
「そんなこと言われても〜!」
 接触まであと300宇宙キロまで距離が縮まった時だった。「白銀の蔵」からそいつが出てきたのは。

 そいつは銀河系には珍しいネコ型種族、おそらくはアバンニャルド星の出身だろうか、袴をはき、背中にバーニャを背負い、右手には、その小柄な体には不釣合いの大型ドリルソード。剥き出しの上半身から頭部にはイナズマ型のトラマーク(それが地毛なのだろう)、そして右目はつぶれているらしく十字架を描いた眼帯をはめ、残る左眼は鋭くつりあがり赤い光を放っていた。
「あれは宇宙用心棒ニャンサッシャー!ピクチョン一家の用心棒のアバンニャルド星人ニャンサッシャーです!!やつは銀河系では2番目の、ドリルソードの使い手です。気をつけてください!」
「気をつけてどーにかなるってもんでもないでしょ〜!」

「ホゲェー!」
 宙をつんざく気合が一閃,ニャンサッシャーの背負ったバーニャが高密度イオンを噴出すと,ナッキーの移動住居とはまるで見当違いの,あさっての方角へ飛び出した。
「あっ、あんなところに宇宙鯨の群れ!」
 宇宙鯨とは,宇宙空間を漂う巨大なプラズマの塊のことである。ただの電気的現象ながら、あたかも意志を持つ巨大生物のように空間を泳ぐその姿が地球の支配動物「鯨」に似ているためそう呼ばれるのだ。
 ニャンサッシャーはその、危険なプラズマの巨塊に自ら飛び込んで行ったのだ。
「ホニャニャニャニャッ!」
 流れるプラズマの間を巧みに縫いながら、ニャンサッシャーの体が縦に、横にと、目まぐるしく回転した。
「ダニャァッ!」
 群れから離脱したニャンサッシャーの、いったいどこから取り出したのか、その左手に抱えた大きな中華鍋に宇宙鯨の角切りが、こんもりと仏舎利塔のように盛られていた。
「どうだ!この宇宙鯨のようになりたくなかったら、今すぐ船を停めろ。停めるんだ!」
 ガッッ!
 最後の手段、ナッキーは空間航行レバーを一気に0に引き下げた。
 ガクガクブルブル!
 急な減速に、星間移動住居のイオン推進システムがエンストを起こした。
「ちょっとなによあれ〜。」
 操縦席で額の冷や汗を拭ったナッキーは、後部座席のミャウダーを振り替えって再び仰天した。
 ミャウダーが、座席両脇を貫通して立てられた住居のメインブラックコラムに手をかざし、メガモーフィング(宇宙船などと融合変形できる、ミャウダーの特技の一つ)の態勢に入っていたからだ。
「ミャウダー!?」
「あの程度の曲芸技でしたり顔されたのでは我慢なりません。どっちが銀河系一のドリルソード使いか、奴に教えてやります!」
「や、奴 って・・・」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
 スペースダンボニウム製・星間移動住居のボディを借りて巨大人型への変形を完了したミャウダーは、ポジトロン・ブレイン(陽電子頭脳)の、ある一点に電位を集中させつつ気合いを溜めた。目は、遮光器土偶のようなスリット状だったものが半月型に変形し、吊り上がっている。

「これは、リバースアップモード!?」
 ミャウダーはおもしろくないことが有ると、その憎念を脳内で増幅し、「リバースアップ」と呼ばれる最強形態に変形することができる。
 そしてリバースアップ発動時にのみ、拳から噴き出す炎をヒートソードとして使用する「ジゴキングナックルソード」を使えるのだ。
「ジゴキング、ナックルソォォォド!」
 シュボ!シュボ!シュボ!シュボ!
「え?4本!?」
 ナッキーが驚いたのも無理はない。いつもなら右手人差指の付け根から一本噴き出すだけのファイヤーソードが、今回は人差指、中指、薬指、小指それぞれの付け根から一本づつ噴き出したからだ。
「ジゴキングナックル、ドリルソォォォド!」
 4本の刃は、ぐにゃりと曲がると螺旋状に絡み合い、先端で収束して一本のドリルソードになった。
「でれぇぇぇーっ!」
 唖然とするニャンサッシャーには目もくれず、巨大ミャウダーは足を引っ込めるとイオンクラフトを全開に、宇宙鯨の群れに突進して行った。
 その後いったいなにが起きたのか、余りにすごい振動のため、中に居るナッキーにはさっぱりわからなかった。
 振動が治まった時、ミャウダーはフライパンに変形させた左手いっぱいに、宇宙鯨肉の千切りを盛り付け空間に浮いていた。
「できる。」
 ミャウダーの技によほど感銘を受けたのか、ニャンサッシャーはドリルソードの回転を止め、背負ったバーニア付属のホルダーに納めてしまった。

 白鳥が翼を拡げたような立派な口髭をたくわえたスキンヘッドの老人。顔中に残った傷跡か、走り続けた男の証だ。
 この老人こそ、未だ宇宙暴対法を巡って巨大国家ウニテッドを相手取り闘っているピクチョン一家の組長トク・ターロである。
 ナッキーとミャウダーは「白銀の蔵」の中にあるクリスタル造りの贅沢な部屋に通されていた。テーブルもソファーも全てクリスタル、その内部には見たこともない甲殻生物の化石が封じ込められていた。
「何となくクリスタル。」
 ミャウダーがボソッとつぶやくと、トク・ターロの後ろにひかえた組員たちが両腕を下から左に、さっと振った。どうやら「今のネタはスルー」と云う意味らしい。
「銀河南西部にあるナンカダイ太陽系ハマ星の特産ハマクリスタルですよ。どうです、珍しいでしょう。」
 トク・ターロが直々に解説してくれた。
「移動住居を修理させていただき、その上食料まで戴いて、本当に有り難うございます。」
 ナッキー達は移動住居の方向舵を直すための設備をここで借り、あまつさえキンダイ星産金目鯛の味醂干しを食料倉庫いっぱいに詰めてもらっていた。
 その好意には感謝するとしても、目的のある旅の途中であることは、はっきり申し伝えねばならない。
「実は私たち、母星を消滅させられた仇を追って旅しているんです。ですからこの宙域に留まって用心棒に とかそう云うのはちょっと・・・」
 と、ナッキーが言った途端、トク・ターロも組員達も唐突にウケた。
「いや失礼。ウチのニャンサッシャーを凌ぐドリルソードの使い手とお聞きし、そう滅多に居るもんじゃない、ぜひ直接お会いして敬意を表したい。そう考えたまでのこと、他意は有りません。
 修理が済まれたらすぐにお発ちいただいても結構ですし、旅でお疲れの体をしばしお休めになられても一向にかまいません。
 また今後貴方がたは、いつ当家に見えられても、客分として迎えさせていただきます。」
「それはつまり、盃を戴ける ゆうことでしょうか、親分?」
 ミャウダーがさもしい質問をした。
 無理もない。ここの盃は銀河最強なのだ。
「ご所望でしたら。」
 トク・ターロが指をパチンと鳴らすと、組員の一人が三宝に、クリスタル製の盃を載せて持ってきた。
「ハマクリスタルで造ったピクチョン一家特製盃です。助太刀ご要りようの時は水を入れてこすって戴くと、最寄りの組員を十人単位で召喚する事ができます。」
「それはすばらしい!ぜひ・・・」
 言いかけたミャウダーを、ナッキーが手で制した。
「お気持ちは大変ありがたいのですが。」
「ナッキー!だって銀河最強、ピクチョン一家の盃ですよ。ナッキーだって最初ここで盃受けておくのも悪くは って」
「失礼ながら、組織の力を行使するのは私がもっとも忌み嫌うところです。
 まして私の敵は国家レベルの存在、そのような政治的にもヤバヤバな闘いに組の皆さんを巻き込んだのでは、反ウニテッド即ちピクチョン一家の意思ととられてしまい、親分さんが現在係争中の宇宙暴対法裁判にも決して良い影響は与えないでしょう。
 私の私闘のために宇宙の道理を引っ込めることはしたくないのです。」
 それを聞くとトク・ターロは納得した様子でうなづいた。
 結局ナッキー達は、星間移動住居のイオン推進システム駆動部シャフトに赤射したスペースダンボキャストの完全硬化を待つため、一晩だけ白銀の蔵に泊めてもらうことにした。

「アサニチカイヨナカー!
 アサニチカイヨナカー!」
 ムジ鳥が叫んでいる訳ではない。これは警報だ。
 決してキンダイ星宙域にはムジ鳥が普通に生息している ゆう訳ではないのだ。
「まだ暗いのにもう一番鶏〜?」
 久しぶりにベッドで寝ていたナッキー、シーツの中で、もぞもぞ。
「違いますナッキー、これはなにかの警報です。
 キンダイ星では警告を発する時、時を知らせる言葉を電子合成音で流すんです。」
「でいり?カチコミ?
 なにせズボン履くからあっち向いてて。」
「へいへい。」
 継ぎ当てだらけのコートは羽織らず、キャミソールに片方破れ落ちたジーンズだけ履いたナッキーは、その上にパレオ代わりのボロ布を巻きながら通路に出てみた。
「あ、ニャンサッシャー。」
 アバンニャルド星人用の黒いパイロットスーツに身を包んだニャンサッシャーが、猫耳カバー付のヘルメットを小脇に抱え、あわただしくこちらへ走ってくる所に出くわした。
「何があったんです?ニャンサッシャー。」
 ミャウダーの問いにニャンサッシャーは立ち止まりもせず余裕の無い声で応えた。
「敵襲だ!ここ最近たまに襲って来る所属不明の黒いテツキョジンが現れた!」
「黒いテツキョジン?」
「ナッキー、私たちもメガモーフィングで加勢しましょう。」
「そうね。」
「その方らは客分だ!ここは、用心棒の某に任せてもらおう!」
 そう言ってニャンサッシャーは、格納庫の方へと走り去って行ってしまった。
「って言われても。
 ねえ?」
「おっしゃる通り、そろそろダンボキャストも大丈夫でしょうし。」
 ミャウダーと顔を見合わせナッキーだけが、にっ と笑った。


 アバンニャルド星の猫型戦闘重兵機コズモンニャーTOM。
 その真っ赤なボディは宇宙での戦闘時目立って不利なのではと思われがちだが、それを補って余り有る敏捷性を兼ね備えており、口には牙(クラッシャー)、四肢には爪、背中にジャイアントカッターを装備した全身これ兇器のようなユニットだ。
 光線、ミサイル等の飛び道具系は一切無いが、それでも無敵を誇っているのは操縦者であるニャンサッシャーの腕に依るところが大きい。
 だが、今回ばかりは勝手が違った。
「何、二体だと!?」
 今までは一体だけでやってきては、ちょっとこぜりあってすぐ帰っていった所属不明の黒いテツキョジンが、今回は二体で襲ってきたのだ。
 どこかで見たような二体のテツキョジンが、これまたどこかで見たデザインの剣から発射するプラズマアークが、時間差攻撃でコズモンニャーを襲う。
 だがコズモンニャーの俊敏な動きは、それも難なくかわし続けた。
「さすがたなニャンコ先生。
 だが、二条のプラズマアークをかわし続けることはできても、二体に対する同時反撃はできまい。」
 一方のテツキョジンが不敵に笑った。
「そう思うか?ならば今こそコズモンニャーの真の姿を見せようぞ。
 オープンゲェーット!」
 コズモンニャーが胴体から、前後二つに分離して、二体のテツキョジンにそれぞれ襲いかかった。
 後半身はギザギザの尻尾で一体を絡めとり、後ろ足の鋭い爪でその装甲を斬り裂いた。
 前半身はもう一体のテツキョジンの両肩に前足の爪を食い込ませ、口のクラッシャーでその頭部にかみついた。
「バカな、パイロットは一人しか居ないのに、なぜ別々に操れるんだ!」
 前半身に頭をかまれている方のテツキョジンから、パイロットの驚きの声が上がった。
「俺が操縦しているのは後ろの方、前の頭は電子頭脳だ。
 とどめっ!」
 いったん相手から離れたコズモンニャー(前)と(後ろ)は、ジャンプすると空中でそれぞれの足を左右におっぴろげ、その足を軸に高速で縦回転しながら再びテツキョジンに体当たり、高速で回る背中のジャイアントカッターが、二体のテツキョジンをほぼ同時に両断した。
「こおおおおおおおお。」
 爆風をかいくぐって再び合体したコズモンニャーの、クラッシャーの隙間から呼気が漏れた。
 コズモンニャーの頭部の、目にあたる部分がひときわ強い光を放った。
 第二陣が来る、その気配を察知していたのだ。
 一、二、三、四、五体!正体不明の黒いテツキョジンが、あたかも闇から這い出る黒豹のごとく、コズモンニャーに迫りつつあった。

「あーやっぱりジェイミン星共和国のウツノシシだー!色黒く塗り変えただけじゃん。」
 星間移動住居のコクピットで、ナッキーはモニターに映ったテツキョジンを指さして叫んだ。
「遂に量産化ラインにのっかったみたいですね。それにしてもただのリペイントで正体隠せるなどと、本気で考えたんでしょうか、ジェイミンは。」
「人生色々、惑星国家も色々、作戦も色々、って言いたいのよ、きっと。」
 一方ニャンサッシャーの方は、そんな時事ネタギャグを飛ばしていられる状況ではなかった。またコズモンニャーを分離して応戦しようとするも、相手が5体ではさすがに分が悪い。前半身、後半身それぞれの両足を4体がかりで捕まえられ、たちまち身動き取れなくなっていた。
 その時、コズモンニャーの後半身から小さな影が一つ飛び出した。
 ニャンサッシャーである。
「ホゲェー!!」
 気合一閃、ニャンサッシャーは背中のバーニアを一気に噴かし、コズモンニャー後半身の足を抱えたテツキョジン…ウツノシシブラックバージョンの一体に突進した。
「ハニャニャニャニャニャニャッ!」
 ニャンサッシャーが縦に横に、目まぐるしく回転しながらウツノシシの周囲を飛び交う。
「猪口在な!」
 振り払おうとしたウツノシシの右腕か、握っていたツインソードもろとも、角切りとなって崩れ散った。
「のぶぁならっ」
 それをきっかけにウツノシシは、おのが身に起こった事象に驚くまもなく全身に枡目が走り、そのまま飛散した。
「ホゲェー!」
 息を着く間もなく、ニャンサッシャーは、同じく後半身を捕まえていた残りの一体に突進を開始した。だがこちらは既に迎撃体勢を整え、もっとも隙の少ない正眼の構えを、ツインソードでとっている。このまま突っ込めば間違いなく、ツインソードから放たれるプラズマアークの餌食になるだろう。
 そうナッキーが判断した時には、メガモーフィングしたミャウダーが動いていた。
「でえぇ〜れれれれれれれれれれれれれ!」
 ミヤマサ超拳奥義「ミヤマサ点突拳」。
 スペースダンボニウムの拳でも、5秒間で320発のパンチを、ただ一点に集中して打ち込めば、テツキョジンの厚い装甲を打ち抜くことができる。
 ヘビー級ボクサーが渾身の力で放つストレートと同じ重さのパンチを秒間64発、これを5秒間正確に当て続ける、それが銀河で一人ミャウダーのみが身に付けたミヤマサ超拳の極意だ。
「れれれれれ、ぅれったぁぁぁ!」
 ついに、メガモーフィングミャウダーのスペースダンボニウムのナックルが、ウツノシシのプラズマ炉心をつかみ出した。
「ええい怯むな!相手は二体、こちらは三体おるんだぞ!」
 後ろでただ何もせず、ソードの鎬で肩をとんとんやっていた指揮官らしいウツノシシが檄を飛ばす。だがすっかり恐れをなした残り二体は、捕まえていたコズモンニャーの前半身も離してしまった。
「冗談じゃない、俺はアナトリア太陽系の人道的復興支援に行くと言うからパイロットに志願したんだ。あんなバケモノみたいなヤツらと闘わされるなんて聞いてない!」
「当たり前だ!侵略戦争に加担するなどと正直に言っては、ゴイズル総統の支持率が下がり次回の選挙に勝てないかも知れないではないか。」
「選挙」という言葉を聞いてナッキーは意外な顔をした。
「あのゴイズルが公正に選挙で選ばれたっての?
 だとしたらジェイミン星人って、バカばっか?」
「ジェイミン星人がバカなのではない、選挙のシステムに致命的欠陥が有るのだ。」
 ニャンサッシャーが解説する。
「だったら治さなきゃ、何でリコールしないの?」
「リコールに応じるかどうか決めるのも、ゴイズル総統自身だからだ。」
「俺はゴイズルなんか支持していない!ただ前に勤めていた建設会社で、ゴイズル党の政権下じゃないと公共工事の予算が下りないと言われて投票しただけだ。」
 部下の一人のウツノシシが食って掛かるのを、司令官ウツノシシは軽くいなした。
「その通りではないか、それで何か問題有るのか?」
「うおおおおおお!」
 唐突に、もう一人の部下ウツノシシが司令官に突進、その機体の胸にツインソードを深々と突き刺した。
「なっ、きっ、貴様!な、何を…」
「そのゴイズル総統は、俺の勤めていた会社が潰れた時、なんて言ったと思う!「構造改革の成果が現れ始めた。」と、うれしそうにだ!」
 ツインソードがプラズマ炉心を破損させたらしく、司令官ウツノシシの機体の端々から高温粒子が噴き出し始めた。
 傷ついた機体で司令官ウツノシシはツインソードを横に凪いだが、その攻撃は部下に当たることもなく、アークさえ放たれずむなしく宙を斬った。
 二体の部下は壊れかけた司令官の横を擦り抜け、漆黒の彼方に溶け込んでいった。
 やがて司令官ウツノシシのボディは大爆発を起こし四散した。
 残った頭部にコズモンニャーの前半身が襲いかかり、クラッシャーで粉々に粉砕した。
「………。」
 ミャウダーは無言のままメガモーフィングを解除した。
「ニャンサッシャー。」
 元の形状に戻った星間移動住居の中からナッキーが呼びかける。
「アタシらこれで、もう行くわ。
 イオン推進システムの駆動部シャフトに使ったスペースダンボキャストも完全硬化したみたいだし。」
「そうか、ならばすぐそこまで送ろう。」
 ニャンサッシャーが、コズモンニャーを再び合体させながら応えた。
「いろいろお世話になりましたね、トク・ターロの親分さんにも宜しくお伝え下さい。」
 と、ミャウダー。
「礼には及ばぬ。寧ろ助けられたは我が方よ。」
 コズモンニャー足裏の肉球を模したバーニャから粒子が勢い良く噴き出し、空間を滑り始めた。
 ナッキーの星間移動住居もイオン推進システムを起動した。
 真空の中をコズモンニャーと並走しながら、ナッキーの青春の旅は続く。
 ナッキーの行く手には、遠い道が、尽きぬ苦しみが待ち構えている。
 負けるなナッキー!
 行けナッキー!
 メガモーフィングせよ、ミャウダー!
 今、流星少女ナッキーは、燃えている!