庵野監督サトエリ主演のキューティーハニー観てキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!


実写でもアニメでもない「ハニメーション」は20年前に存在していたアマチュアの技術

厳密には「実写でもありアニメでもある」ハニメーション。スチール写真を加工しアニメーションとして動かす。
20年前,特撮かぶれの高校生クリエイターたちが「スチールアニメ」と呼び、シネカリに次ぐお手軽特殊効果として自主制作映像作品で最も多用されていた技術だ。
(注釈:シネカリ→シネマカリグラフの略,光線兵器の使用場面で針などを使い光線をフィルム面に直接描くという,フィルムだからこそできた技術で「スター・ウォーズ」の1作目…エピソード4に相当…にも使われていた。針の代わりにガラスペンに塩酸をつけて描く応用技もあり,筆者の経験では2Nで赤い光,0.2Nで青い光を作ることができた。)
スチールアニメを多用した代表的な作品には「最強ロボ ダイオージャごっこ」という作品があった。
CGでもミニチュアでもない,着ぐるみすら着ていない、額にお面をつけただけの人間の役者3人が、それぞれの肉体を分離、変形、合体させて1体の巨人になる。そのプロセスをサンライズアニメ「最強ロボ ダイオージャ」のオープニングアニメをそのまま模して再現するために,役者の写真を斬った張ったし、それを斬り絵アニメの原理で動かしていた。
現在プロになったクリエイター達の中にも,この作品で衝撃を受けた人は多い(と思う)。

筆者自身もそんなアマチュアクリエイターの一人だったわけだが,当時、国内で特撮を志すアマチュアクリエイターのほとんどは、ダイコンフィルム(今のガイナックスの前身となった自主制作映画団体。「オネアミスの翼」の制作が発表されたときも「SFマガジン」誌などでは「ダイコンフィルムが劇場映画に進出!」と書かれたりした。)の洗礼を受けていた。
・「帰ってきたウルトラマン(庵野秀明主演版)」…MAT(?)隊員役の庵野氏が,めがねをかけるとその顔のまま巨大化し「ウルトラマン」として怪獣と闘う。「帰マン」の名を冠しながらも、変身方法に限らず中身全般「セブン」だったような気が。
円谷版のNG主題歌「戦えウルトラマン」を権利取得の上で使っていた。
・「怪傑のうてんき」…地獄からきたあほう鳥,私立探偵・早川健が変身する、スカッと参上スカッと解決,人呼んでさすらいのヒーロー。
ゼネプロ(ゼネラルプロダクツ。ダイコンフィルムが商業映画進出への足がかりとして出店していたホビーショップ。ヒット商品にメタルキット「クレクレタコラ」「幸福を呼ぶ3メートルの宇宙人」などあり。店内喫茶コーナーの店名「SID」は「星雲仮面 in DUNE」の略である)社長の武田氏主演のものと後にオタキングとなる岡田斗司夫氏主演のものとがあり、海外ロケなども行い数話作られた。
・「愛国戦隊 大日本」…ソ連に崩壊の兆しなど微塵もなかった頃に作られた作品。
日本の国土を狙う故・某国の尖兵組織「レッドベアー」と戦う東映風戦隊。
カミカゼ、スキヤキ、ゲイシャ、ハラキリ、テンプラの5人の戦士が,フジヤマ長官の指令の下,ミンスク仮面の「洗脳5ヵ年計画」を阻止する。
女戦士アイ・ゲイシャの技「色町遊び天国と地獄」では東映映画「ジャッカー電撃対vsゴレンジャー」のパロディを盛り込むなどの芸の細かさを見せ、日本中に反共の嵐を呼んだ。
それまで「SF大会のオープニングアニメを作ってるスタッフ」程度の認知度しかなかったダイコンフィルムの名を、特に東映特撮ファンの間で一躍ブレイクさせたのもこの作品。
だがこの作品がサブカルチャーの世界に与えた最も大きな影響はなんと言っても,以後の特撮ヒーローものを志すアマチュアクリエイター達,特に高校の部活動や大学のサークル活動でやっている人たちがやたらと戦隊ものを作りたがるようになったことだろう。

・宇都宮東高校「宇宙防衛軍ジェットマン」…某「鳥人戦隊」より何年も前に作られた。当時の主流だった機材・光学8ミリフィルムカメラの特性を極限まで引き出した最高傑作。侵略者「コマ撮り姉妹」の作戦で宇都宮駅東一のデパート「たわらや」をぐるぐる回す場面は「キューティーハニー」で東京タワーが回る場面の元ネタになったのでは?と邪推するのは筆者だけか?
後年、本作と同じ大垣氏の監督による短編作品「こまどり兄弟」がNHK-BSで放送された。

・北九州市 西南学園高校「私立戦隊 西南V(ファイブ)」…3話まで創られた。男子校で結成された戦隊ゆえに,5人目の戦士「西南ピンク」となる女生徒を探し奔走する第2話が涙を誘った。更にそのピンク、第3話で役者が代わっていたのには号泣しますた。
敵は「U集団」。

・「硬貨戦隊エンダマン」…天が呼ぶ,地が呼ぶ,人が呼ぶ,悪を倒せと俺たちを呼ぶ,硬貨戦隊エンダマン、お呼びとあらば即,見参!
金持ちになるだけで満足だったはずの男が怪しい聖徳太子(!)像にそそのかされ世界征服の野望を抱いてしまう。阻止すべく立ち上がったのは1円玉,5円玉,10円玉,50円玉,100円玉をそれぞれモチーフとした5人の戦士。
敵怪人は紙幣がモチーフ。
また、500円硬貨の発行日に6人目の戦士が登場するという,ストーリー中のイベントと現実世界のイベントとのリンクという面で時期的に大変恵まれた作品でもあった。おりしもその回の敵は「500円札怪人」。
「オレは500円玉,貴様と同じ金額だ!」という登場時のせりふが大受けだった。

これらが筆者の脳内での「大日本の子供たち」ベスト3だ。
尚,この流れは海外までも波及し,おフランスでも日本文化好きなクリエイター達が「JUICY SENTAI FRANCE FIVE」を作った。ロボのデザインがいかにもおフランス(同国の昔の軍帽を象った頭部など)な感じでとってもトレヴィア〜ンだ。

一方で戦隊ティストではなく極右思想のみを受け継いだ以下のような作品も作られた。

・「神風ライダー」…ヤクザにどつかれ瀕死の重傷を負った青年が,天皇陛下のありがたいお話を読み聞かせられながら看病を受けたため、アカを弾圧する思想改造人間となってしまう。

・「国防挺身隊」…TBSの「平成名物TV えびぞり巨匠天国」でも放送されたメジャー作品。製作者は「神風ライダー」と同じ人。
「挺身隊が曲がりまーす。挺身隊が右に曲がりまーす。挺身隊は右しか曲がりませーん。」徹頭徹尾この調子のセリフ回しは今でも語り草になっている。

以上,実写作品ばかり引き合いに出してきたがダイコンフィルムの最初のブレイクは「DAICONV オープニングアニメ」であり,これがアニメ雑誌で紹介されたのをきっかけに、国内でアマチュアアニメーターが急増し,以後開催されるSF大会や同人誌イベントではことごとく,準備スタッフたちがオープニングアニメの製作を企画するようになった ということも特筆しておこう。

「ダイコンフィルム」はあらゆる意味で日本の映像界における「セカンド・インパクト」だった。
ダイコン「以前」と「以後」の世代は、アマチュアクリエイターの毛色が明らかに違う。
ダイコン以前の自主制作映画は、大林宣彦監督作品のような、昔ながらの日本映画を踏襲しつつ、より叙情的な画面造りを追及した芸術作品、そして前衛劇団の人たちが始めたイメージフォーラム系の難解な作品が主流だった。
「変身ヒーロー」「スーパーロボット」「エンターティメント」などというものはむしろそんなアマチュアクリエイター達にとっては「コマーシャリズムの象徴」として蔑視の対象ですらあった。
それが、ダイコンフィルムの登場以降,意地悪な云い方をすれば「コマーシャリズムに毒されたエンターティメント作品」も大手を振って「自主制作映画でござい」と名乗れるようになった。
ダイコン作品の波及効果により、それまで特に地方の人たちに知られてなかった作品も日の目を見るようになった。
東海大学の「うにくらげ」「東海仮面」、甲藤プロダクションの「続・海底軍艦」など。
ビデオデッキというものが一般家庭にようやく普及の兆しを見せ始めた頃だ。「うる星やつら」を録画するためにビデオデッキを買ったアニメファンのうち一部が、自主制作作品のダビング交換をはじめたのだ。
本来、流通することのない非商業作品に、水面下にせよ流通ルートが生まれ、地域間の交流と情報交換が一気に活性化したのだ。
地方では当時、有志サークルにより頻繁に催されていた、地元未放映アニメの上映会で自主制作作品がプログラムに挿入されたり、そのうち自主制作オンリーの上映会も開かれるようになった。
それを見た、それまでただの特撮ファン、アニメファン、同人誌マンガ家だった人たちがキャメラを手にとった。
「ダイコン以前」の人たちとは種の起源が異なる彼らは「以前」の人たちのようなアンチ・コマーシャリズム思想などもっていない。むしろ「もしオレのデザインしたヒーローがバ◎ダイで商品化されたら…」などと夢見て、自分の好きなヒーローへのオマージュ作品を、作り始めたのである。
学校の部活などを母体とした人たちは、人数に恵まれていることもあり、戦隊を作ることが多かった。それだけ「大日本」のインパクトが一番大きかったこと、そして「大日本」に倣い、さまざまなモチーフ(色であったり「カミカゼ、スキヤキ、ゲイシャ、ハラキリ、テンプラ」といった国辱アイテムだったり硬貨だったり)を当てはめパロディにしやすかったからだ。
戦隊を作るほどの人数が集められない一般サークルはオリジナルの仮面ライダーや宇宙刑事を作った。
そしてこの流れはやがて一般メディアにも漏洩し、とんねるずの「仮面ノリダー」、明石家さんまをリーダーとする「かまへんライダー」、最近ではダウンタウンの松本人志さんご家族の「松本レンジャイ」などが生まれた。
パロディはオマージュへ、そしてオマージュはやがてオリジナルへと進化する。
そういった流れを「宇宙船」(朝日ソノラマ)、「ふぁんろーど」(銀英社)を始めとする濃い雑誌が中心となってどんどんあおり、やがて「SFX巨人伝説ライン」(荒井 豊:監督/スーパーチーム&巨人ヒーローvs巨大怪獣というテーマに完全オリジナルで挑んだ意欲作。シリーズとしては未だに続いており、数年前にはコンビニエンスストアのTVCMに登場するなどして話題を呼んだ。)や、「ドリームエンジェル ジェニーV(ファイブ)」(初期タイトルは「ドリーム戦隊バービーV」舞映:製作/セーラームーンより数年早く作られた美少女戦隊。としか云わなかったら( ´_ゝ`)フーンでしかないが、この作品、タイトルにもある通りタカラの人形「ジェニー」シリーズを使ったフル・マリオネーション作品なのである。タカラとくれば当然、敵はアクロイヤーの改造。又、全国各地で意欲的に地方ロケを行い、ロケ先の観光名所が破壊される場面が毎回の見せ場でもあった。戦いではヤマ場になると「ドレスアップ」する。尚、武内先生がこれを見て「セーラームーン」を描いたのかどうか、という事実は現在まだ未確認。)など、ダイコン以外の自主制作作品も同人ソフトとして流通するようになった。
「大日本」から10年もたった頃には更なるオリジナリティを求め、そして「一般人にもアピールできるものを」と、「変身」「仮面」という枠にすらとらわれない作品が大量に生まれた。
こうした自主制作映画シーンを創り、支えてきた人たちのうちかなりの人数が現在プロの世界で活躍しており、いまだ若い人たちの中でも根強い「映画は洋モノ、日本映画の特に特撮はショボい」というまるでお年よりの痔民党信仰みたいな偏見イモヨーカンのように削ぎ落とす原動力となっているのは、皆さんもご存知の通りだ。
「セカンドインパクト」は、これから進化して行く日本映画が時代に求めた必然だったのかも知れない。

写真は「ドリームエンジェル・ジェニーV」より、今井監督から当時いただいたカニゴーストのブロマイド(カードNo.51)。
「北海道の毛ガニは安くてうまいというが山陰のカニも捨てがたいぞ!」(カード裏面の、恐らくは監督によると思われる直筆解説文より)
因みに今井監督はその後業界入りされてゴジラ映画の絵コンテなど描いておられるそうです。
アマチュアでいっぱしの作品作ってたくせにカタギの企業人してるのは オイラぐらいかorz

余談だが庵野監督の近年の作品を観ていると、「ダイコン以前」のアマチュア作品で多用されていた演出手法(「エヴァ」の列車の中で自分のドッペルゲンガーと会話する場面とか、「式日」に至っては前編これ「ダイコン以前」)が多く見受けられるのも興味深い。「セカンドインパクト」を起こした張本人の一人である。ということは、「セカンドインパクト以前」の時代の中で育ってきた一人でもある。ということか。


で、キューティーハニー である。
冒頭の戦闘シーンでいきなりスチールアニメとの合成による「板野サーカス」(ポスト「ガンダム」とまで呼ばれるほどにヒットしたTVアニメ「超時空要塞マクロス」の、可変式戦闘機バルキリーとホーミングミサイルによる戦闘シーン、そのアクロバティックな動きから、アニメーター・板野一郎氏の名を取りこう呼ばれ、当時これを庵野監督は「DAICONWオープニングアニメ」で見事に真似して見せた。)を披露し、観客全員の度肝を抜いた。
若い一般人たちは、ここまでスピーディ、且つ、見事に曲がるホーミング弾というものを実写で観るのはおそらく初めてだったろう。
ダイコンフィルムを知っている人なら「スゲエ!DAICONWだ!!」
続いてハニーが空中からキックの体勢に入る。「ライダーキックか!?」と思いきや、キャメラはハニーの視点となって、進んで行く画面の中央に蹴り足は固定されたまま、戦闘員たちが左右にはね飛ばされながらアウトして行く。スカイキック(「仮面ライダー(新)」でスカイライダーが必殺キックをはなつ場面と同じアングル、元々は「キカイダー01」のゼロワンドライバーで使われた手法)かい!
そしてハニーを迎え撃つハカイダー四人衆…じゃないパンサークロー四天王。
ゴールドクロー(片桐はいりさん)、コバルトクロー、スカーレットクロー(新谷真弓さん/GAINAXアニメではおなじみの声優さんですね)、そしてブラッククロー(及川光博さん、ミッチーですよ、以前どこかの永井豪先生関連の本に「デビルマンまんせー!」なコラムを寄せておられたほどのダイナミックファン)。
ミッチーの登場シーンは圧巻!「マジンガーZ」であしゅら男爵が機械獣を操るのに使ってたバードスの杖の先っぽにつけたマイクで劇中歌「ブラッククロー参上」を歌いながらの登場、これはもうメイクしててもミッチーにしか見えません。
ミッチーが天に手をかざすと、その背後から暗雲が発生し決戦場、ジルタワーを包み込みます。
昔「キカイダー01」の中でギルハカイダーが使った「サタンダークネス」(01の動力源である太陽光を阻むため、空中で体から黒い煙を出す技)、今の技術だとこんな映像になるのでしょうか、でもハニーは太陽電池ちゃうでえ。
暗転した背景の中、螺旋回廊の上で斬り合うサトエリとミッチー。ん、この構図もどっかで見たぞ。
「宇宙刑事ギャバン」のエンディングです。魔空空間で縮小された土星の輪の上で斬り合うギャバンと獣星人。

「実相時カット」も多用してました。例えば夏ちゃんと青児が会話する場面、画面左半分には二人が映ってるのですが、その右端(シネスコサイズなので)にはサトエリの脚(それも付け根近辺をきわどいローアングルから)。
当然ながら男性諸氏は、耳では夏ちゃんと青児の会話を聞きながら、目線はシネスコ画面の右端へ。
こういうカットがたまたま目に付いたのではなく、前編これこの調子なのである。
引きでフェードインするときは最初にサトエリの脚(それも付け根近辺をきわどいローアングル)から入る。ミニスカで走れば地べたにスタンバったキャメラの真上を通過して行く(完全に陰でした。Rがつかぬよう逃げ方も絶妙)。
要するに無駄なカットがほとんどないのである。永井豪原作を題材に取ったエンタメストーリーと同時にサトエリのムチムチボディが心逝くまで鑑賞できるようになっているのだ。ここまで殊勝なカット割は、TVの深夜番組であっても今までどこもしてくれなかったぞ。


実相時カットにしても、そして先に述べたスチールアニメその他今まで日本のプロ・アマを問わず日本特撮で培われてきた特技と演出手法の数々。要するに今回、目新しいことは何一つやってないのである。
ただ、それら断片的な要素を集めて劇場公開作品に、それもサトエリやミッチーを起用し一般人も観に来るような作品に仕上げたことは、庵野監督の大きな功績だと思う。
一般の人たちにとっては「初めて観る映像」そして僕達にとっては「ヲタのそしりを免れなかった時代から20年間(人によって個人差あり)夢見てきた映像」だった。
日本特撮(アニメも)の世界にセカンドインパクトを起こした集団「ダイコンフィルム」のメンバーである庵野監督こそ、この作品を作るにふさわしかった訳だ。


そころで、筆者は庵野監督同様、「一般人にもアピールできる作品」を作れるだけのセンスをもった特撮監督をもう一人知っている。
2003年末、BSフジで放映された作品(全4話)のオープニングでは、敢えてヒーローもの然とした演出を避け、日本テレビ往年の青春ドラマ「グランド劇場 ちょっとマイウェイ」(桃井かおり主演)のオープニングアニメを髣髴とさせる手法をとったそのセンスに、筆者は戦慄さえ覚えたものだ。

願わくば、そろそろ「サードインパクト」の起きんことを。



(注釈:「グランド劇場 ちょっとマイウエイ」のオープニング→落書きのような体に顔だけ役者の顔写真を貼り付けた登場人物…たとえが悪いけど「サウスパーク」に出てくるフセインみたいなの…の運転する、これまた落書きみたいな車が、やはり落書きみたいな背景に描かれた道を走って行くアニメーション。写真の差し替えでキャラの表情も変わるところが楽しかった。バックの歌は「あしたのジョー2」TV版後期のOP「ミッドナイト・ブルース」でも知られる荒木一郎の「夜明けのマイウエイ」。♪かな〜し〜みを〜 い〜く〜つかぁ〜)






筆者の知っている特撮監督とは「侵略ちょ〜美少女ミリ」の明瀬礼洋氏のことです。