高気密・高断熱住宅とは




 最近、高気密・高断熱住宅という言葉をよく聞きますが、どういうものなのでしょう。
 ここでは、その概要について簡単に説明したいと思います。
 







  従来の住宅
  高気密・高断熱住宅とは
  R2000住宅とは








従来の住宅


 湿度の高い日本の住宅は「夏を主に考えるべし」的な発想から建築されてきました。しかし、現代では「快適」を求め、夏は冷房、冬は暖房と外気温度に関係なく室温を一定に保とうとしています。
  断熱という意識のなかった時代は結露という問題はほとんどなく、自然通気により柱や壁は常に乾燥した状態で家が長持ちしていましたが、近年の中途半端な断熱により壁内で外気と室内の温度差が生じ壁内部が結露、かびが生えたり、腐食したりしています。つまり、中途半端な断熱は家の寿命を縮めると同時にそこに住む人間の健康を害しているとも言えます。








高気密・高断熱住宅とは



 最近、多くの住宅メーカーが「高気密・高断熱住宅」をうたっていますが、中には「えっ。ほんとうに」というようなものや、施工者(特に現場の人)の認識がないメーカーもありますので選択には十分な注意が必要です。
 また、一般的に高気密=高断熱と受け止めている人が多いと思いますが、厳密に言えばまったく別物です。
 高気密とは家全体をビニール袋で包んで空気を逃がさないように、高断熱とは家全体を断熱材で包んで魔法瓶のような状態にすることを言います。したがって高気密住宅には計画的な換気が不可欠であります。
 私の経験上、営業マンに気密・断熱性能について問い合わせてみると気密係数については1〜3cm2/m2程度の値が帰ってきますが、断熱性能についてはほとんどが返答ありませんでした。
 最近大手ハウスメーカーが広告の中で「Q値」を提示しておられます。これからは徐々に断熱係数についても浸透していくのではないでしょうか。


1.高気密・高断熱性能の評価基準

 (1) 気密係数
    
    壁面1m2当たりどれだけの隙間(穴)があいているかを示す値です。一般的には気密係数(壁面1m2当たりの隙間)は1〜3cm2/m2程度を高気密住宅と呼んでいるようです。
 測定時にキッチン換気扇の吸排気口等を目張りするメーカーがあるようですが、通常の状態で測定しないと意味がありません。


 (2) 断熱係数
      一般的にはあまり知られていないようですが、快適な生活をする上では非常に重要な要素です。
  断熱係数とは1m3当たりで1時間あたりどれだけの熱が外に逃げていくかを示す値で、2Kcal/m3以下が望ましいと考えられているようです。
 某社のセントラル冷暖房機器のカタログでは気密係数2cm2/m2以下、熱損失係数は2kcal/m2h度以下を推奨しています。


2.方式

 現在多くのメーカーから多くの工法が発表され、建築されていますが、断熱の面から大きく分けると

 ・内断熱
 (天井、壁、床と断熱層をつなげていく方法)

 ・外断熱
  (躯体の外側から断熱材を張る方法)になります。

 それぞれにメリット、デメリットがあるようなので選択する時は検討が必要です。いずれの工法も完全な施工があってその性能が発揮されますので、施工者のレベルが重要になります。 気密シートの張り方、コンセントや水道配管の処理方法など詳細な点までノウハウがあるようです。
 また、高気密・高断熱住宅は2×4でないとだめだという誤解が多いようですが、在来建築でも十分性能を出すことができます。








R2000住宅とは



 R−2000住宅とは「紀元2000年までに全ての住宅の外壁の断熱性能をR−20以上にして、家庭で消費する暖房費を1/4以下にしよう」という、カナダが官民合同の元に開始した国民省エネ運動の略称です。
 各部位の断熱性能をカナダではR(熱貫流抵抗)値で表し、日本ではK(熱貫流率)値で表現します。
 また、カナダではフィート、日本ではメートル単位であるため、日本流にいえば、全ての外壁のK値を0.244以下にしようとするものです。

1.R−2000住宅の特徴
 
 R−2000住宅は、高気密・高断熱に関して究極といってもよい住宅です。 日本のR−2000住宅は地域、部位(外壁、天井、窓など)ごとに基準なるK値を示しています。(別表参照)

 使用材料の断熱性能の明確化と機械による計画換気をすることで高気密・高断熱住宅は使用部材、建築地域、方位、設計図などから年間冷暖房費をシミュレーションすることができます。
 例えば東京の年間冷暖房費は55,000円(36坪、冬季20度、夏季26度での全館冷暖房)となります。 暖房に関していえば必要なエネルギーが小さいので深夜電力を使用した蓄熱暖房機器を導入してもコスト、温度とも十分な効果があげられます。
 また、コスト比較をする場合、投資効果の比較をすることも大切です。R−2000住宅を建築すると年間冷暖房費は前記のとおり安くなりますが、一般的にイニシャルコストは10万円/坪程度高くなります。(最近はもっと安くなっているようです。)

 また、断熱性能を上げても冷房負荷は減少しないという傾向もあり、東京以南については日射の遮断など冷房負荷対策が必要になってきます。





断熱性能および省エネルギー性能の地域別区分表
断熱性能
地域区分
地 域(都道府県は省略)
T 北海道
U 青森、岩手、秋田
V 宮城、山形、福島、群馬、栃木、茨城、新潟、富山、石川、福井、長野北部、京都北部、兵庫北部
W 全記以外
X 静岡、宮城、鹿児島、沖縄


R−2000住宅の部位別熱貫流率基準値
(単位:KCal/m2h℃)
断熱性能
地域区分
外壁 屋根 天井 一般床 外気床 窓  ドア
T  0.24   0.19   0.16   0.24   0.16   1.80   1.80 
U 0.24 0.19 0.16 0.24 0.16 2.50 1.80
V 0.27 0.21 0.18 0.27 0.18 2.50 1.80
W 0.30 0.23 0.20 0.30 0.20 2.60 1.80
X 0.34 0.26 0.23 0.34 0.23 2.50 1.80