釣り大会に参加したのは今回が2度目。平成4年にリョービ主催、山本太郎さんが参加(実技指導含む)の大会以来である。あの当時は私も落とし込みをはじめたばかり、富山でもまだまだマイナーな釣りであった。しかし、最近では特に夏場のクロダイ釣りは、前打ちが間違いなくメジャーだ。好ポイントに前打ち師が林立して竿を出している光景も珍しいものではなくなってきた。はまればはまるほどこの釣りの奥深さを感じる。それがこの釣りの魅力かも知れない。
さて今年の春、”北陸の釣り”という雑誌でこの会の存在を知り入会しこの大会に参加することにした。私自身、サンデーアングラーならぬウイークデーアングラーでかつ単独釣行が多いため、前打ち師と出会う機会は極めて少ない。それゆえに自分より上達者の釣りを見てみたいという気持ちで参加しようと思ったわけである。
7月の下旬であったろうか、私のホームページを見て金沢からメールをくださった方がいた。何度かメールをやりとりするうちにこの大会にも参加されるということ。よければ同行しませんか?ということで遠慮なく同行させてもらうことにする。この方が今回同行してくださった植松正人さんである。最初名前を聞いた時からどこかで見かけたお名前だと思い、聞いてみるとかかり釣りで ”北陸の釣り”に連載投稿されている方と知ってびっくり。本棚の数冊には、グラビアにも載っている、、、こんな方に同行してもらっていいんだろうか???
植松さんは、会の支部長金子さんとも懇意なようで大会の情報やら釣り場の状況やら色々教えていただく。そして当日の行動についてはすべてお任せすることにする。大会前日夜、携帯に電話を入れると金沢チヌ研のメンバーが40センチクラスをかなり上げているとのことで優勝は50センチラインになるのではとのこと、かなりレベルが高そう! やはりうまい連中は沢山いるんだなあと改めて痛感。昨年の実績からすると30センチオーバーを釣れば入賞できるのではないかと言われていたがとてもじゃないようだ。30センチオーバーなら運が良ければなんとかなるかななんて甘い考えを持っていたので、かえって気が楽になる。
入賞ってことより、なんとか釣果を一枚でも取る事を目標に頑張ることにする。
いよいよ明日が大会。近づくほどに興奮状態。明朝4時集合ということであるがとても寝られそうにないので夕食後出発、PM11時にみなと会館前に到着(集合5時間前)し、一杯引っかけ仮眠する。熟睡とまではいかないまでも思いの外寝ることができる。
4時に受付、すでにNO。32、一体どれだけの人が参加するのであろうか? 昨年は100名ほどであったそうだが、、私が受付後もぞくぞくと参加者がやってくる。その中に雑誌でみた植松さんの顔があり声をかける。(雑誌よりもずっと男前である)それから今回同行の宮前さん、伴さん、あとで合流の岡田さんと顔合わせをする。
そこで今日の予定について話を聞く。外海(大浜)は昨日の状況からするとよくないので川筋、ウエーディングポイントを攻めるとのこと。私にとってウエーディングの釣りは初。たまたま今年渓流釣りをはじめたおかげでウエダーは持っていたのでよかったもののウエーディングでの前打ちってどんな釣りになるだろうと若干不安に思う。しかしながら郷にいれば郷に従えである。自分のレパートリーを広げる意味でもチャレンジするしかない。
大会開始10分前、金子支部長より競技についての説明がある。
説明が終わった途端に各人ポイントに向かうために小走りに車へ。そして道路は、まだ朝の5時というのにまるでラッシュアワーのように流れ出す。我々は、植松さん先導で第一ポイントを目指す。
到着した場所は、船が係留されている川。とてもこれがクロダイを狙う場所とは今までの私の認識からは、かけ離れている。しかし、実際釣れているのであるからやってみるしかない。いままで腰につけていたエサ箱は、水に浸かるため胸の位置まで上げ、いよいよ釣り開始。すでに2名ポイントに入っており、私は一番端に入る。少し立ち込んだ場所から竿下の位置に杭がある所に釣り座を決める。
日曜の早朝ということで船の出入りが激しく、そのたびに波が寄せる。それをかわすために体は常にゆらゆらと動かしているものだからなんだか船酔いでもしそうな感じ。釣りにはなかなか集中できない。そんな中、私の隣の釣り人が本命をヒットさせる。今回、25センチ以上がキープサイズで、それはぎりぎりであろうか?やっぱり釣れるんだと実感。やっと気合いが入るがアタリなし。
その後植松さんから ”場所替えしましょう!” のコール。実際もう場所替えするの? と思うが自分では状況判断できないので従い仕舞準備。
次に入ったのは民家裏の川筋でボートが係留されている場所である。道路脇には車がたくさん駐車されていて障害物回りのポイントには、既に人が入っている。橋上からの釣りはダメであると説明があったのにやっている輩もいる。
ここはかなり水深が浅い場所で濁りは入っているものの、底は砂か泥のよう。やはり障害物付近が狙いのようであるが、もう探ったあとのようである。それでもめいめいポイントで探りを入れるがやはりアタリはなし。再び”場所替え”コール。
今度は対面に入るとのこと。ここはまだ誰も人が入っていない様子だが、1本杭が出ている以外は障害物はない。それでも、前、超前、仕掛けを変えアタリを待つ。杭回りを攻めると何かがあたってくる。本命かどうかはわからないもののエサのカニのサイズを落として仕掛けを入れる。パタパタと軽々しい引きで何かが付いている。よく見ると20センチ余りのセイゴである。生まれて初めてセイゴを釣ったのだが、あまりの小ささと引の弱さにがっくり。当然リリース。
ここも30分足らずで移動することになる。”水深のある港内でやりますか。”ということで初めて海らしい場所での釣りとなる。集合したみなと会館の裏にあたり日曜日ということもあって家族連れの釣り人がたくさんいる。狙いを落とし込みに変え、際を探る。港内で水深は3ヒロ半くらいあるが、底狙いでボタ底を探る。 しかし、明らかにエサ取りのアタリが激しくどうも釣りにならない。仕方なく前を攻めるが結果は一緒、今回イガイは用意していなかったので歯が立たず。
結局ここも早々に退散することになる。時間は既に8時を過ぎ残り時間はもう2時間。今から大浜に行くには時間がない、ということで最後のウエーディングポイントで粘ることになる。
最初の場所のやや手前であろう(地理関係はよくわからず)ポイントに到着。すでに大会の参加者と思われる3人組とシーバスを狙うルアーマン数人の姿が見える。川の流れに向かって右のほうにゴロタ石が入っているポイントであるということで最初そちらのほうに向かう。私は、左側に見えるブイがどうも気になり、そちらから攻めることにする。
釣りはじめてしばらくすると会長の金子さんとカメラマンが状況確認のためにやってこられる。先に入っていた前打ち師とのやりとりが聞こえ、どうも30センチオーバーをすでに釣っているらしい。これはあとでわかったのだが、このときに写真撮影するからみせてくれということで移動する際にストリンガーごと落として逃げられてしまったということである。そんなこととは知らないが、いずれにせよこの場所で釣れたということで先ほどゴロタ石回りを攻めていた植松さんもこちらにやってくる。
そのとき私はブイ回りを攻めていたのだけれどエサ取りらしいアタリが2度ほどあったものの、そこはやや深めでときおり通過するボートの波でウエダーから水が入りそうになっていた。胸にある携帯電話のほうが気になりやや集中力を欠いていた。
そのしばらく後、私と5メートルくらいしか離れていなかった植松さんの竿に本命がヒット。やりとりの様子を見るにこれは良型!?って感じ。竿を左右に交わしながら、あれじゃウエダーから水が入りそうな様子。そして ”あれ小さい、小さい”という声と共にクロダイの姿が。30センチは超えていると思われるが大きさの割に体高があり、ずんぐりむっくりといったタイである。
その間私はエサの付いた仕掛けを垂らしたままにしており、すっと持ち上げるとエサがない。???? 食われたのだろうか??? 気を取り直して再び開始。先ほどよりやや潮が流れているようでブイに潮がブイにぶつかりややよれている。そこに狙って仕掛け投入。底に着いたかどうかで穂先がクイッと入り、すかさず合わせを入れる。あまり重量感はないものの明らかに本命らしい引き。余裕で糸を出してやり、あっという間にタモ入れ。あー小さい、これはキープサイズあるであろうか。ストリンガーにかけ戻ってくる植松さんに見せても ”微妙だね”との答え。一応キープしておく。
一枚キープしたが、サイズ的に不満でもありもう一枚を狙って再度同ポイントに。さらに植松さんがさきほどよりも小型ながらクロダイをゲットする。このときにはもうウエダー内には水がかなり入り、ずぶ濡れ状態。(すでに携帯は車に)もちろんそんなことなどもう全然お構いなしで打ち返し続ける。
ところがそこに工事船がやってきて工事をはじめるから移動してくれとのこと。せっかくアタリがでてきたところであるのに、、そう思いながらも仕方なく移動。ゴロタのポイントに入る。再び金子さん登場。植松さんが釣果報告し、カメラマンに写真を撮ってもらっている様子。私は少ない残り時間一発狙いで集中する。しかし、本命のアタリもないまま時間切れとなる。
岸にあがったときにはもう完全にずぶぬれ。ウエダーを着ていても濡れますよと事前に聞いていたので着替えは用意していたもののこんなになるとは、、、
検量に向かうまで釣果を報告しようかどうか迷う。”尻尾まで伸ばしますよ”と植松さんが言ってくれたもののそこまでして出すべきだろうか? でもせっかく来たのだから、、などと思い悩む。結局、あとから金子さんが巡回されてときに今日は、ほとんど釣れていないという話を聞いていたのでダメもとで検量することにする。
検量は雑誌でお見かけしている 岡崎おまつりFCの小幡さんと金沢チヌ研の方。結果 25.1センチ、恥ずかしながらセーフである。その後植松さん検量、30.5センチとのこと。そして結果を待つ。締め切りまで30分余りあったが検量に来る人は少ない。ほとんどがゴミ袋のみ持参の方々である。植松さんの3位入賞もかなり可能性が高いと思っていたが、15分くらい前から30センチオーバーが数枚持ち込まれる。
いよいよ検量が終わり結果発表。
第1位は、38,3センチ。やや白っぽい魚体から川筋での釣果ではないかと思われる。入賞者には名古屋や大阪からの参加者も数人入っている。そして期待の植松さんは、7位で入賞する。
大会後、金子会長より結果発表されるが、参加者は210名(当日参加者含む)あったものの12名しか釣果がなかったとのこと。予想以上に貧果であったようである。そして表彰式に移り、次々と入賞者が表彰される。その後、お楽しみ抽選会で釣りグッズやら生活雑貨やら参加者全員にいただく。
大会開始前、海の状況があまり良くないとの観測から ”今日は腕の差がでますね”と植松さんに問うたところ間髪を入れず ”いえ、ポイント選定です”と返ってきた。そのときは一瞬えっと思ったが、大会が終わりやっとその意味がわかった。
これは大会後日談であるが、当日釣果があったのは川筋でばかりで大浜(外のテトラ帯)ではほとんど全滅状態であったそうである。なかには45センチクラスをタモ入れ寸前にばらした人もいたそうである。
今回の釣行に際し、ポイント選定はお任せで付いていくつもりでした。もし私が単独で参加していれば迷わずテトラ帯での釣りをしていたであろう。彼は自分の過去の経験と大会寸前までの情報から川筋での釣りに的をしぼっていたのであろう。 そしてダメとわかると見切るタイミングの早さ、状況判断力。それが彼の腕前になっているのであろうと思う。いい経験をさせてもらう。
また今回同行し、これからも釣り友達としてお付き合いできそうな人たちとの出会いに感謝しております。
ここ数年で爆発的な勢いで浸透し、まだまだ広がり、さらに進化していくであろうこの釣法、落とし込み、前打ち釣り。ますますはまりそうである。