神通峡周辺の民話・伝説シリーズ その12
                                          

    だらなあんま     (細入)

 

 
むかし、だらなあんま(兄)がおったと。



ある日、そのうちの法事(ほうじ)をするのに、
坊(ぼう)さんをよんで来てくれと母ちゃんにたのまれたと。

「坊さんて、どんながね」

「黒(くろ)い着物(きもの)きておるよ」

あんまはしぶしぶでかけたと。

 



とちゅうで木の枝(えだ)に烏(からす)がとまっているのを見たと。

「坊さん坊さん、うちへ来てくれ」

と、あんまがいうたら烏はカアカアといって飛んでいった。
家に帰ったあんまはそのことを話したと。




「だらめ、そりゃカラスや」

と、母ちゃんにしかられたと。そして、また、よびに行ったと。

 

やがて坊さんが来られて、お経(きょう)も終わって、
お膳(ぜん)を出そうと鍋(なべ)の蓋(ふた)をとったら、
母ちゃんがまたびっくりしたと。





「あんまや、あんま、このニシメどうしたがね、何もないぜ」




「ああそれけ、わしがいっしょうけんめい火をたいておったら、
何も食べんがに、クッタクッタというので、
どうせならくってしまえと思ってくってしもうた」

母ちゃんは二度びっくりしたと。

 

こんどは坊さんが風呂(ふろ)に入ったと。



「あんま、お湯(ゆ)がぬるいとよわるから、
そこにあるもん、何でも燃(も)やしてあげられ」

と、母ちゃんがたのんだと。




「はい、はい」

といって、あんまはそこにぬいである坊さんの大事な衣(ころも)まで
燃やしてしもうたと。

「あんま、あんま、ちょっと湯があついで、ぬるしてくれよ」

と、坊さんがたのんだと。




「はい、はい」

といって、あんまは食後のお茶冷(さ)ましのことを思い出し、
つけものの沢庵(たくあん)を持ってきて風呂の湯をかきまぜたと。





坊さんは自分の着物もないし、くさい、くさい、こりゃかなわんと

にげていったと。    おしまい。

  
 「ふるさとのわらべうたとむかしばなし」 細入婦人学級編より再話





細入地域の方言


天地気候

暖かい        あったかえ  ぬくとえ
暑い          あっつえ
泉(清水)       しょーず
寒い          さぶえ  さうえ
寒さにふるえる   がちゃくる
冷たい         ちぶたえ  ちうたえ
つらら         かねこり
谷           たん


老幼男女

赤ん坊        ねね  ねんね
兄           あんま  あんさま
弟           おっじゃ  おじ
姉           あんね  あね
祖父          おじじ  じーま
祖母          おわわ  ばーわ


日常あいさつ等

元気ですか       まめなけ
謝辞のとき        きのどくな  ありがとう
驚く・疑問・納得の   なんちゅうねぇ  なんねも
あいず          かんねもねぇ  なんしてま
              たいね  そーむらえかえね
馬鹿にする       だらにする
ごめん(謝罪)      かんね


   
「細入村史 村のことば」から抜粋 



じいちゃん・ばあちゃんが子どもの頃のお話






「ばあちゃんたちの子どもの頃は、学校へ行く時、
何をはいて行ったものだね」
「何をはいて行ったものかなあ、その頃は。
あしなかか、ぞうりでもはいて歩いたものか、
覚えがないなあ。どうせそのようなものだろうなあ」
「ばあちゃんたちの子どもの頃は、食べ物は、
どんなものくっていたのかねえ」
「どんなものくっていたかなあ。
さあ、昔は今のように、このようならっきょうなど作らなくて、
ほとんど麦類だったからなあ。
大麦だの、小麦だの、それらをおちらしにして、くったり、団子にしてくったり、
今は、本当に極楽だよ。
遊んでいて、薪わりしなくてもいいし、草刈りしなくてもいいし、
ただ、ごはんを食べて、遊んでおれば、それでいいのだから。
昔は、馬車うまのくうような麦ごはんだったなあ」
「昔は、学校へ行くといったって、粗末なものを、つぎして着て、
ひじを破るし、ひざを破るし、今のように電灯がなかったので、
ランプの光でつぎをして…。粗末なものを着て
、粗末なものを食べて、よくそれで命があることよ。
今そんなことを思えば、今は、極楽みたいなものだよ」
              
「細入村史 村の習俗」より