第102話 九万坂 富山市二松
九万坂の地名の起こりは不明であるが、熊が出るような恐ろしいところ、また淋しいところという意味からではないだろうか。それがいつか九万坂というようになったとも考えられる。
掘割の中間、野田道付近から両側とも山で、杉松雑木が生え茂り、昼でも薄暗く、本当に淋しいところであって、子どもの頃からの伝説では、夕方や朝早く通ると、野田道付近の地蔵さんのところに、きれいな姉さんが立っていて、声を掛けられたとか、東大久保の石碑の近くからきれいな女の人が後から着いて来て、いつの間にか前の方から手招をした話、狐や狸に化かされた話、火魂が飛んでいた話、首を吊って死んだ人が化けて出る話など、恐ろしい話や淋しい話には事欠かない。
「開村百七十周年記念 二松のあゆみ」