第111話   山火事止めのまじない       富山市楡原

 芦生の焼野、川向いの楡原に焼倉というところがある。昔、毎年のように霜月(十一月)の巳の日になると、きまって山火事が起きた。付近の村々の人たちは山の神様のたたりだとたいへん恐れていた。



 ある年、旅の六部の僧が、ちょうどそのころこの村に泊まり合わせ、村人のおびえている様をみて、「麦のいり粉をふりかければ、たちどころに消えるであろう」と教えてくれた。
 百姓たちは半信半疑だったが、いり粉作って待っていたところ、案の定、火の手が上がった。そこですかさず火をめがけていり粉を投げかけたところ、火勢はみるみる衰え、とうとう消えてしまった。
 それからは、毎年霜月の巳の日には必ずいり粉をつくり、いろりの隅に供えるまじないをするようになった。その後山火事は絶えてないという。
              
「大沢野町誌」