第17話 尾萩野の首なし地蔵さん 富山市小糸
はじめに
しょうわ 三十ねんだい、 こめづくりを しやすく するために、 すいでんの こうちせいりが ありました。 おおきな きかいが はいり、れんじつ たいへんな さぎょうがおこなわれました。 のぼとけの さとの ほとけさまたちも だいいどうして、 せいりされた ころの おはなしです。
ちょっと むかしに あった おはなしですが、 「おはぎの」と いうところで、かいたくが はじまったころの ことです。 そのころの「おはぎの」は、ひと ひとりが ようやく とおれる くらいの ほそい みちでした。
みちの まがりかどに じぞうさんたちが ならび、 くさが のびると じぞうさんたちを めあてに あるいた ところです。
そんな のどかな ふうけいが ひろがる 「おはぎの」だったのです。
「おはぎの」では、 よっつの むらの ひとたちが あつまり、 はたけしごとに ごぼうやら にんじんなどをつくり、 ちかくの むらへ うりにいって、 こずかいかせぎを して くらして おりました。
いちめんに くわのきが あり、 かいこさまを はる、 なつ、 あきと さんかいも かいました。
かいこさまからは まゆを とり、 その まゆから、 やわらかい きぬのいとをとりました。
そのころのこどもたちはおやつも ないので、 がっこうがおわると、 いそいで はたけへ いって、おやつがわりに くわのみを くちのまわりが むらさきいろに そまるくらいに たべたものです。それが なによりの たのしみの ひとつでした。
そんな 「おはぎの」に だいじけんが おきました。 その くわばたけを おこし、 たんぼにして こめを つくることに なったのです。
あるひ、ブルドーザーが はいって きました。 おおきな おとで、 ガアー ガアー。 ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロゴー。
むらの ひとたちは おどろき、 いそいで おじぞうさんたちを すこし はなれた やまての ばしょへ うつしました。
それから しばらく こうじが つづき、 すこし たいらな ところが できたので、 むらの ひとたちは あたらしい たんぼを つくるしごとを していました。
すると、 くわのさきに カッチンと あたる まるい いしに、 おばさんは びっくり!
ほりおこして みて、 おばさんは二ど びっくり!
「ありゃ りゃ りゃ! これはたいへん! おじぞうさんの あたまかも しれんよ!」
くさのなかに あった おじぞうさんが、 こうじのときに ブルドーザーに とばされたのかも しれません。
おばさんは、 まわりに どうたいが ないかと、 あっちこっち さがしました。 ありました! くびのない おじぞうさんが、 みつかりました。
あたりを キョロキョロ みわたすと、 いっしょに しごとを していた おじいさんが みえました。
よぶと、 おじいさんも とんできてびっくり!
「これは これは もったいない。おじぞうさんの あたまは、 おれがつけてやろう」と おじいさんは、たいせつに いえに もちかえりました。
きれいな みずで あらって みると、 なんとも かわいい おかおの おじぞうさまでした。
おじいさんは ていねいに コンクリートを ねり、 あたまと どうたいを つけてあげました。
しばらくして、 もとの すがたに もどった おじぞうさまを、 きれいになった だいちに そっと かえしてあげました。
やはり、 もとの だいちが うれしいのか、 おじぞうさまは、にこやかな すがたになり、 しずかに てを あわせて いらっしゃいました。
それからのち、 ふしぎなことがおきました。
ながいあいだあたまが いたくて おばさんは こまって おりましたが、 もとの すがたに なられた おじぞうさまの おかげで、 ずつうが すっかり なくなりました。
おしまい
民話出典 「下夕南部野菊の会 紙芝居」