第19話   寺津の河童の話    富山市寺津

 むかし、この寺津の村に、ひとりのおじいさんがすんでいました。一日のしごとをおえたおじいさんは、かわいがっていた馬のからだを、ゴシゴシ、川原であらってやったあと、しばらく夕すずみをさせていました。
 やがて、日は西の山へしずんでいきます。「さあ、今日もごくろうさんだったな。家にかえって、どっさりうまいものを食べさてやるぞ」と、おじいさんは馬のたづなをとりました。たづなのさきは、川のせの方にのびて、ゆらゆらとゆれていました。
 おじいさんはたづなをひょぃとたぐりよせましたが、いつもと手ごたえがちがいます。「おやっ」と思いながら、こんどは力一ぱいたぐりよせますと、たづなといっしょに河童の子どもが「フンギア。フンギア」と泣きながらひきよせられました。きっと馬を川ぞこにひきこもうとしていたにちがいありません。
 河童はずいぶん長い間、水から頭だけ出して、馬をねらっていたらしく、力のもとになる頭のさらが、からっぽになっていました。そこをおじいさんにふいににひっぱられ、たづなにからだのどこかが、もつれてしまったらしいのです。
 おじいさんは「このいたずらものめ!」とばかり、こらしめのために、台所のはしらへ、てつのくさりでしばっておきました。
 そのばんのことです。おばあさんがごそごそおきてきました。水が飲みたくなったのです。
 おばあさんは、台所で水を飲み、「お前は、また、ばかなやつじゃ」といって、なにげなく、ひしゃくでコツンと河童の頭をたたきました。
 さあたいへんです。その時、河童の頭のさらに、ひしゃくの水が入ったのです。河童はたちまちあばれだし、くさりを切って、いちもくさんに、にげてしまいました。
 


 しかし、この河童は、なかなかれいぎ正しく、ごおんをしる河童であったらしく、これからのち毎年のようにサケやアユなど、きせつの魚を、台所のかけ木にかけていきました。
 おばあさんは、だんだんと、よくばりになって、せっかく持ってきてくれるのだからと、大きなてつのカギをいくつもかけ、もっと、もっとたくさん魚をかけることが、できるようにいたしました。ところが、河童は、前にてつのくさりでしばられたことがありましたので、てつをみると、びっくりして二度とあらわれなくなったとさ。

民話出典「大沢野ものがたり」