第1話 だらなあんま 富山市細入
むかし、だらなあんまがおったと。
ある日、そのうちの法事をするのに、 坊さんをよんで来てくれと母ちゃんにたのまれたと。
「坊さんて、どんながね」
「黒い着物きておるよ」
あんまはしぶしぶでかけたと。
とちゅうで木の枝に烏がとまっているのを見たと。
「坊さん、坊さん、うちへ来てくれ」
と、あんまがいうたら烏はカアカアといって飛んでいった。
家に帰ったあんまはそのことを話したと。
「だらめ、そりゃカラスや」
と、母ちゃんにしかられたと。
そして、また、よびに行ったと。やがて坊さんが来られて、お経も終わって、お膳を出そうと鍋の蓋をとったら、
母ちゃんがまたびっくりしたと。
「あんまや、あんま、このニシメどうしたがね、何もないぜ」
「ああそれけ、わしがいっしょうけんめい火をたいておったら、 何も食べんがに、クッタクッタというので、どうせならくってしまえと思ってくってしもうた」
母ちゃんは二度びっくりしたと。
こんどは坊さんが風呂に入ったと。
「あんま、お湯がぬるいとよわるから、そこにあるもん、何でも燃やしてあげられ」
と、母ちゃんがたのんだと。
「はい、はい」
といって、あんまはそこにぬいである坊さんの大事な衣まで 燃やしてしもうたと。
「あんま、あんま、ちょっと湯があついで、ぬるしてくれよ」
坊さんがたのんだと。
「はい、はい」
といって、あんまは食後のお茶冷ましのことを思い出し、つけものの沢庵を 持ってきて、風呂の湯をかきまぜたと。
坊さんは、自分の着物もないし、くさい、くさい、こりゃかなわんとにげていったと。
おしまい。
「ふるさとのわらべうたとむかしばなし」細入婦人学級編より再話