第22話 狐の嫁入り 富山市岩稲
時は明治も終わりに近い頃、八尾町黒瀬谷の本法寺本堂再建のため、石突きが行なわれた時のことである。
楡原村はもちろん、岩稲からも奉納米と獅子舞を用意した。八尾から回って岩屋村の堀口さんのところが休み所である。岩稲では出発は午前2時頃であった。
川向こうの下夕村の道路で何やら明かりがチラチラ行き来する。そのうちにだんだん多くなり、牛ケ増の村上家と旧お宮さんの中間くらいのところから船倉用水のあたりまで明かりがチラチラ明滅する。
さらに明かりが多くなり、上から下るもの、下から上に向かって上がるもの、かれこれ五十くらいの明かりが、上ったり下ったりして明滅する。それは見事なものだった。
やがて車に獅子舞の道具が積まれた。馬も二頭ばかり、立派な鞍が付けられ、手綱が掛けられ、用意ができたので惜しくも出発したが、居合わせた人たちもこんな光景は初めてだったようだ。人が持つ提灯は後光がさすのだが、この時は後光もなく、消えたり灯したりであった。向かいの山を見ると、その時のことを思い出す。
「ふるさとのわらべうたとむかしばなし」細入夫婦学級編