第37話 狐の嫁入りその1 富山市猪谷
「狐に騙されて、暗い夜道を歩き回された」という話を、子供の頃よく耳にしましたが、これは、四〜五年前の話です。
孫娘が朝、「今日は帰りが遅くなります」と言って出掛けたので、そろそろ終列車(二十三時)が着く頃と、表に出て、猪谷橋の方向に目をやりますと、蛇場見の辺りに、チラチラと灯りが見えるではありませんか。
「こんな真夜中に、しかもあの様な高い処で、一体何をしているんだろうか」などと思いながら、しばらく見ていましたが、灯りはなかなか消えません。
「狐が人を騙す時は、その人の近くに、狐がいるんだよ・・・」と聞いていましたので、何だか薄気味悪くなって、急いで家に入りました。今でも、「狐の嫁入り」なんてあるのでしょうか。
(森川津や子さんのお話)
「村の今昔」細入歴史調査同好会編