第38話  カワウソと提灯     富山市猪谷



 道路工事で、地形も昔とかなり異なっていますが、国道三六〇号線を宮口三郎さん宅から蟹寺方面へ百m程行った処に、山側に大きく湾曲した場所、「タノンド」が在ります。
 当時、「タノンド」の道路下には、小川が流れ、川側は、一間余の石垣で、その下は急な斜面となり、樹木、雑木が鬱蒼としていて薄暗く、道からは、神通川の川面は全く見えませんでした。
 広辞苑によれば、「カワウソは、イタチ科の哺乳類で、水かきが在って、泳ぎに適し、魚等を捕食す。人語を真似て人を騙し、水に引き込む」とあります 但し、「タノンドのカワウソ」は、蝋燭を好み、提灯を付けて行くと、灯りを消してしまうという、一風変わった習性がありました。
 従って、夕方、「タノンド」を通る時には、誰しもが、提灯に火を付けず、特に、夜番の子供達は気味悪がって、「タノンド」より先には行かず、「タノンド」前で折り返して、拍子木とチリン、チリンを、次の当番(隣り)に託し、早々に家に帰ったそうです。

(森下宗義さんのお話)
     
「村の今昔」細入歴史調査同好会編