第65話 丹後の局と地神 富山市楡原
楡原の住吉氏邸内に、地神という社がある。
鎌倉時代のこと、源頼朝の妾であった丹後の局はまことに容姿端麗で、頼朝から寵愛を受けていた。懐妊のことから暇を与えられ、故郷の京都へ帰る途中、住吉神社の畔で男子を出産した。
丹後の局は、両親に会うのも面白ないと京に行かず、あちこちさまよい、ついに北国に来てこの屋敷に住み着いて、子どもを育てた。
しかし、その後病気にかかり、さびしく世を去っていった。その子どもこそ、住吉家の先祖にあたり、母親の丹後の局を祭神にしている。
この屋敷で出産すると神の怒りにふれると言い伝えられ、現に同家の人が妊娠すると必ず他人の家を借りて出産したという。
「越中伝説集」