第77話   お正月の話 一つ転がせば,一千両    富山市二松



 ちょっとむかし、お正月になると、いろいろとかわった旅芸人や、越前万歳、恵比寿大黒、福の神、お稲荷、猿まわし、福俵などが、この二本松へきたんだよ。
 きょうは、福俵のことを話してしんぜよう。
 美しい米俵(長さ三十五センチ 直径二十センチ)の両端にきれいな金の鈴をつけ、その俵に六メートルくらいのなわひもをつけて、福俵を持ったおじさんは、万歳師の服を着て、わらふかぐつをはいて、背中に俵をかついで、家を一軒一軒まわって、そのあとを、子どもたちがくっついて歩いたもんだ。
 その頃の二本松には、一軒の家に子どもが五、六人うまれておって、それは、にぎやかだった。
 福俵のおじさんは、家の玄関木戸口に立って、大きな声で、
 「あーめでたいなあー。めでたいなあー」といって、自分で木戸口を開き、広間の入口の戸をあけて、米俵を広間に二メートルぐらい投げ、もっと大きな声で、
 「一つ転がせば、一千両」
  今度は一番大きな声で
 「三千両のおん俵、福はこの家にどっさりー」
 と、神棚の下まで投げる。
 「空き俵、こちらへ」と引きもどす。
 そのお礼として、餅を五切れか七切れもらっていった。
 その芸人たちは、もらった餅を町へ持って行って、一切れ二銭で売り、みんなで五円の収入があったそうな。この五円を今のお金にしたら、二万五千円ほどのもんかな。
 「もういーくつねたらお正月ー」
 お正月を待ちこがれる子どもたちの元気な声が聞こえてきそうだよ。これでおしまい。
 
話者 西野久一  再話吉田律子  
 「船峅のむかしがたり」