第82話   大永寺の松          富山市大久保



 大久保の塩の大永寺に、七歳の子どもがあった。ほうそうをわずらって養生していたが、病気は悪くなるいっぽう。
 母は死期も近づいたと、
 「おまえが死んだらどこへいくだろう」というと、その子どもは目を開き、
 「死ねば極楽へ行く。阿弥陀様がごちそうして待ちかねておられる」といったので、
 母が、
 「その極楽へどうして行くのだ」
 「阿弥陀様に負われて行く」
 「どうして阿弥陀様が負うて行かれる」というと、
 その子どもは、
 「わしはわからんが、阿弥陀様は、わしが可愛ゆうてならんそうな」というと、皆涙を流してその心に感心したということだ。
            
「大沢野町誌」