第89話  ガメの石像       富山市岩木



 大沢野の岩木にガメの石像をまつった「ガメの宮」がある。
 それは、むかしむかし、大沢野に用水をつくる名人がいた。
 ある日この男の家に「あんたの命は残り少ない。今のうちによいことをしておくことだ」と警告した。男はとても元気で、病気ひとつしたことがなかったので、笑い飛ばして信じなかった。
 ある日のこと、男は息子をつれて舟で乗り出し、岩木のあたりの淵にさしかかった。突然、息子が足をふみすべらしあっというまもなく、水中へドブーン。男は息子を助けようと、続いて飛び込んだが、二人とも沈んだまま再び帰ることがなかった。
 人々はガメの仕業といって、再びこのようなことがないよう、ガメの石像を刻んでまつったものである。
                                    
「伝説とやま」