第93話 八木山のいわれ 富山市八木山
舟倉山に陣取った大谷狗の一隊と大若子命の率いる美麻那彦・沢古舅・大路根翁・猿田舅等の一隊とが激戦を重ねた。遂に大谷狗の陣地から猛火攻めの手が打たれ、風は舟倉山から吹きおろし、大若子命の一隊は逃げ場を失った。手の施しようもなく、命は大国主命から賜った霊剣を抜いて、丈なす草をなぎ払って、地に伏し一心に神を祈った。
すると風向きがにわかに変わって、大谷狗等のいる舟倉山に向かって燃え進んだ。命の一隊は命からがら猛火をくぐって小竹野の本陣にたどり着くことができたが、その山は燃え続け、焼け尽くしてしばらくは草木も生えなかった。人呼んで焼山といい、のち八木山と書かれるようになった。
「大沢野町誌」