第97話  腹痛をおこす水   富山市黒瀬谷



 戦国のころ、八尾町にある城生城は、代々斉藤氏が守っていた。この城は飛騨勢の越中侵攻に対しては、地の利もよく、善戦健闘し連戦連勝していたが、天正十年(一五八二)から翌年にかけて、佐々成政の軍勢に、越中側から攻められたため遂に落城した。
 しかし、この合戦での斉藤勢の戦いぶりはめざましく、一時は佐々の大軍が敗退して、富山で軍勢のたてなおしをせねばならぬほどであった。従って、城生城のまわりには激戦地のあとが多く、中でも葛原の井戸山は、佐々勢が飲料水を得た場所であるが、これが斉藤勢に襲撃され、最大の激戦地となり、佐々・斉藤両軍の戦死者がうらみをのんで数多く倒れた。そのため、その血が今もしみこんでいるといわれ、このあたりの清水を午前十時以前に飲むと、腹痛がおこるといわれている。
                                    
「大沢野町誌