富山の方言        
   

富山は「お国言葉」の生きる街

みなさんは、あなたの町の「お国言葉」を使っていますか?、それとも、努めて標準語を使うように心がけているほうですか?

日本全国どこでもきちんと言葉が通じるというのは便利ですが、方言が廃れていくということは、その町に住む人々の「その町らしさ」が消え失せてしまうことだと思います。

年配の人たちだけでなく、自分が生まれた土地に代々伝わってきた言葉を大切にしている人たちに出逢うとなんだか ”ほっ” とします。


富山では、今でも人々の間にしっかりと富山弁が生きているよ

大阪弁や名古屋弁に比べて、富山弁は方言の中でもさらに「ローカル」なイメージがありますし、富山が映画やドラマの舞台となることも少ないので、富山弁はあまりよく知られていないと思います。でも、実はかなり独特で、面白い言葉です。「富山弁=関西弁+東北弁+名古屋弁 である」という人もいます。
実際には、富山県の中でも地方によって言葉が異なり、方言の宝庫だという言語学者もいます。

まあ、そういうわけで、ここでは富山の言葉の基本について紹介しましょう。




基本的な文法事項

「が」の用法

例文1:あんた、なんしとんがー? (あなた、何してるの?) 
例文2:これはこうやって作る! (これはこうやって作るの!)
例文3:勉強すんやーわ (勉強するのは嫌だよ)

例文1の「が」は疑問の終助詞です。この文ではイントネーションが重要なポイントで す。普通、疑問文では文末が上がりますよね? でも、富山弁では、「なんしとんが?」の「と」にアクセントが置かれ、文末は下がるのです。そのため、富山弁を良く知らない人がこの言葉を聞くと、相手が怒っているかのように聞こえるのです。

例文2の「が」は強い断定を表します。疑問の「が」に比べて断定の「が」はずいぶん強く発音されます。私のイメージでは、この「が」には、自分の主張を意地でも押し通そうという強い意志が感じられるので、あまり多用しすぎるとわがままな人と思われるか も……。「絶対絶対絶対嫌だっっっ!」という意味で「いやが!」といいます。

例文3の「が」は、「〜こと」「〜もの」「の」というような意味です。相手の言ったことに対して「そんなんじゃないよぉ〜」と曖昧に否定するときに、「そんながでないちゃー」といいます。
富山の人が、標準語を話そうと努力しても最後まで抜けきらないのが、この「が」なのだと聞いたことがあります。東京のど真ん中で、友達が「あんたなにすんが〜」などと富山弁で話しているのを聞いて、恥ずかしく思った富山人が、「が言うやめて!」と叫んでしまったという笑い話があります。
(おわかりですよね、「『が』って言うのやめて!」と言いたかったわけです)

先ほど、富山弁は名古屋弁と東北弁と関西弁のミックスだという説についてと書きましたが、文末の「が」は、名古屋と富山で共通する部分の一つです。
名古屋では、「〜がや」とか「〜がね」と言いますが、富山にも「〜がいね」という表現があるんです。「そうがいね」は「そうだよね」とか「そうなんだよ」いうような意味です。

「け」の用法

例文1:それなん? (それなに?)
例文2:なに見とったん? (何見てたの?)
例文3:おらすけー? (いらっしゃいますか?)
例文4:何持ってきたんが? (何持ってきたの?)

例文1〜4すべて、疑問を表します。例文1・2のように、音便の「ん」+「け?」という表現は、非富山人が富山に「帰化」するときに真っ先に使い始めてしまう言葉ではないかと思います。実は私も気に入ってます。

例文3は、近所の人がちょっと誰かの家を訪ねたときに、玄関先で叫ぶ言葉です。よほど親しい間柄でしか使われないようですが。

例文4は、先ほどの「が」と組み合わせた用法ですが、まさに「これぞ富山弁!」という感じがします。初めて聞いたときにはものすごく違和感がありました。私は「なにしとんがけ?」という表現が大好きです。

「ちゃ」の用法

例文1:これちゃどこで買ったがけ? (これどこで買ったの?)
例文2:なんちゃ? (なんですか?)
例文3:じゃぁここで待っとっちゃー。 (じゃあここで待ってるからね)

例文1の「ちゃ」は主格の格助詞で、「〜は」という意味です。「そんなふうにするがちゃ やーわー」(そんな風にするのは嫌だ)のように「が」と組み合わせて使うとまさに「モロ富山弁」、という感じになります)。

例文2の「なんちゃ?」は、「お願いがあるんですが」「何?」と言うときの、「何?」にあたる表現です。目下の人や親しい間柄で使われま。

例文3のように、文末の「ちゃ」は「〜よ」「〜だよ」というくらいの意味ですが、非富山人にとってはなかなかうまく使いこなせない表現で前に続く動詞の活用がいまいちつかめないのです。富山弁には独特の音便がありますからねぇ。

「れ・られ」の用法

例文1:ちょっこし寄っていかれ (ちょっと寄っていって下さい)
例文2:キトキト富山に来られ! (元気な富山にいらっしゃい)

例文1は、友達とどこかにいった帰りに、自分のうちで一緒にちょっとお茶でも……、というシチュエーションで使われます。また、広告などでは「よってかれま!」という文句をたまに見かけますが、これもほぼ同じ様な意味です。

命令形の「〜られ」は富山独特の方言で、なんだか味わい深くて好きなので、例文2のようにページタイトルにも使わせていただきました。ちなみに、「キトキト」というのは 「新鮮な」とか「いきいきとした」「元気な」というような意味で、富山弁の中ではかなり全国的に有名な言葉だと思います。富山は魚介類のおいしい地方だといわれていますが、ここでは、「新鮮でおいしい魚」を「キトキトの魚」というんですよ。

                   戻る   以上で〜す。 vvvvv